酔っ払いと喧嘩

社会人二年目の息子は、一か月に何度か、お酒を呑み、夜遅くに帰ってきます。時より、息子の友人・知人から、泥酔しているので迎えに来てほしいと、電話があり、夜も遅いのに、と不満を漏らしながら、私は車で迎えに行っていました。この日も、いつもとおなじように、呑みに行った息子。入浴を済ませて時計をみると、十一時を過ぎていました。そこに、家の電話が鳴ったのです。こんな時間だから、また、あのバカ息子だな、と、少しの違和感を覚えたものの、子機をとりました。違和感というのは、いつもは、私の携帯電話に息子の携帯電話から、知人たちが息子にかわり電話をしてくれるのですが、この日は、家の電話だったのです。「はい、○○ですが、どちら様ですか?」私は決まり文句をくちにして、電話に出ました。すると、聞きなれない言葉に、聞きなれない男の人の声。

「○○警察署ですが、お宅の息子さん? Aさんを逮捕しました」と、いったような内容だったと思います。正直に言うと、警察から電話がかかってきた時点で、心臓が縮みあがり、頭のなかは真っ白になって、息子が逮捕されたという事実以外、何一つ頭にはいってこなかったのです。一人では、この電話に対応できないと、とっさに思った私は、明日も仕事があり、早くから眠っている夫を起こしに、電話を握りしめたまま階段を駆け上がりました。「起きて、Aが逮捕されたって、警察から電話が」私はよく眠っている夫をおこし、「そんなの悪戯だろう」とか、「オレオレ詐欺じゃないのか」と、半信半疑の夫に子機を押し付けました。夫は寝ぼけた声で、電話に対応していましたが、すぐさま、声色が変わり、生真面目な声にかわりました。夫の横顔のしわが、深くなるにつれて、私は不安で、不安で仕方ありませんでした。「とりあえず、警察に行くぞ。Aに会ってから、考えよう」 と、夫は言いながら着替えをはじめました。夫の言葉に、少しだけ安堵した私は、たしかに、息子に面会してから、これからのことをどうするのか、考える方がいいと、夫に従いました。

今でも、治療費や慰謝料などで相手ともめているようです。警察にも相談をしたそうですが、警察は「我々は事件に関しては、対応しましたが、民間人のトラブルになった原因やその後のことに関しては関わらずことができず、弁護士に相談をしてください」と一蹴をされたようで、現在では示談をする方向で考えて、弁護士にいろいろと相談をしているそうです。

私もパジャマから普段着に着替えました。当然、濡れた髪をかまう余裕もありません。そのまま、夫の運転する車にのり、警察署へ行きました。車のなかで、夫が警察からの電話の内容を説明してくれました。息子はいつものように、知人たちと呑みにゆき、何軒かはしご酒をしていたようです。そして、帰宅する途中で、酔っ払いにからまれ、息子はその酔っ払いと喧嘩をし、暴行罪で警察に逮捕されたとのことでした。警察署につき、私は不安でありながらも、一目でも息子に会えたら、と希望のようなものを抱きながら、夫のあとをついて、警察署内を歩いていました。ですが、警察署で息子に会わせてほしいと、何度、お願いしても、「接見禁止ですので、ご家族であっても、面会はできません」との返答のみでした。私たち夫婦は、息子が喧嘩をして暴行をはたらいた、と一方的に警察から話を聞かされただけで、詳しいこともわかりませんし、なにより、面会し、直接、息子から話を聞くこともできません。私たち夫婦は、警察署で接見禁止の息子に面会することもできず、ただただ、困惑するばかりです。

投稿日:2016/11/30